2009年11月4日水曜日

償い

昨日のお休みにインターネットで何とはなく さだまさしさんの記事を見ていた。
グレープの時代から心の琴線に触れる素晴らしい曲を紡いで来られた。精霊流し、雨宿り、コスモス、関白宣言、防人の歌、道化師のソネットなどなど、時に哀しく、時に暖かく、心に響く曲ばかりだ。
高校の頃、放送部の人がよほど好きだったのか、昼休みには中島みゆきさんの♪時代とさださんの♪雨宿りばかりが流れていた。
♪雨宿りは、ある雨の日に雨宿りで知り合い、彼が彼女の両親にプロポーズするまでのエピソードを彼女の視点で綴った曲だが、ユーモラスで暖かく、幸せな気持ちになる素敵な曲だ。ライブの音源でしか聞いたことはないが、ライブでなければあの良さは伝わらないだろう。

彼の曲は、楽しい曲も哀しい曲も、ただ楽しいだけ、ただ哀しいだけの曲では終わっていない。行間を読むような感じで言葉で伝えにくいニュアンスを伝えているメッセージ性のある音楽だと思う。
反体制のフォークやロックだけがメッセージ性が強い訳ではなく、♪雨宿りのようなほのぼのした曲にも何が幸せだろうかというメッセージが伝わってくる。

彼の曲の中でも♪償いという曲は、償うということはどういうことだろうかといった難しい問題を歌で投げ掛けている。
この曲は、さださんの知人の方のお話に感動し、作られたそうだ。
知人の方は、昔、ある雨の夜、横断歩道を歩いていた男性に気付かす、男性を轢いてしまった。すぐに病院に運んだが不幸にも男性は亡くなってしまった。病院に駆け付けた男性の奥さんは、大切な人を失った悲しみから、「一生あなたを許さない」と怒りの声を浴びせかけた。彼は泣きながら廊下に額を擦り付け謝り続けるしかなかった。
その日から彼は一生懸命に働き、給料をもらうとすぐに女性に送金をし続けた。
お金で償えることではないと分かりながら、でも何かをしなければと思って謝罪の言葉を添えて送金し続けた。
事故から7年経ったある日、未亡人となった被害者の女性から彼のところに手紙が届いた。その手紙には、こう書かれていた。
あなたの優しい気持ちは良く分かりました。送金はもうやめてください。あなたの手紙を見る度に亡くなった主人を思い出して辛いのです。あなたの気持ちはよく分かるけど、それよりあなたの人生を元に戻してあげてください。
その手紙を受け取った彼は手紙の内容よりも償い切れない人から手紙をもらったことが有難くて涙が止まらなかった。
それでも彼女への送金だけは止めなかったそうだ。未亡人の方は、自立して収入もある人で送金に頼ることはなかったが、彼は償い切れない罪を少しでも償おうと送金し続けたのである。

♪償いには、こういう歌詞がある。

人間って哀しいね だってみんな優しい
それが傷付けあって かばいあって

被害者の未亡人は、彼の優しい心は理解しても許すことは出来ないかも知れない。彼は何をしても決して償い切れないことだと分かっている。
償うということは、こういうことなんだろうかと、歌で語り掛けている。

三軒茶屋駅の構内で当時18歳の少年4人が、当時43歳の男性と些細なことで口論となり、男性に殴る蹴るの暴行を加え、男性は蜘蛛幕下出血で亡くなる事件があった。
2人の少年は傷害致死の罪で訴えられ、判決の結果、求刑通り2〜5年の不定期の懲役に処せられることになった。少年達は反省の言葉を述べるものの被害者にも問題があったことも語っていた。
裁判長は判決の後、正確ではないが、こう付け加えて話されたそうだ。
君達は、さだまさしの償いという歌を聴いたことはあるか。せめて詞を読めば謝罪することの意味が分かるだろう。
裁判で歌の歌詞を取り上げ被告人を諭すことは異例だが、この曲を聴いた裁判長がそういう発言をされたのは理解出来る。

さだまさしさんの曲は、どの曲も心に伝わる何かがある。
毎年、イギリスやオーストラリア、アメリカと海外で暮らす日本人や外国の方に向けたコンサートを精力的に行っている。
これからも素晴らしい曲を作られることを望んでいる。

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(=^・^=)kinop